本を読んでいくうちに伏線のストーリーが紐解ける爽快感がたまらない、ミステリー小説のおすすめを一挙ご紹介。コテコテのミステリーから優しい気持ちになれる読みやすいミステリー本を紹介しています。
かがみの孤城-(著者)辻村深月
【あらすじ】
あなたを、助けたい。学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
かがみの孤城のレビューを抜粋
5.0
ファンタジーとリアルが絶妙に混ざり合う。かなりの長編だが、エピローグまで通して、素晴らしい小説だった。
中学時代ほど理不尽な時代も少ない。幼さが剥がれたあとの、むき出しの野生が現れる時期だ。感受性が強い人ほど防具もなくむき出しでさらされる。とても耐えられないだろう。
登場人物たちも、色々な理由で不登校になっている子どもたちである。そして、ある日開いた鏡の中の世界。そこで出会う7人の少年少女たち。
それぞれの物語がミステリーをまじえ徐々に紐解かれていく展開に目が離せなかった。
違う世界だとしても、信頼できる仲間がいる。これだけで人は強くなりうる。例えば、道で転んだとき、一人なら恥ずかしく惨めな気持ちになる。
しかし、そばに友人がいるそれだけで、同じ事象が、格好の笑い話になる。そばに誰かがいる、というのはそういうことだ。
そういう信頼できる仲間がこの道の先に必ずいるんだ、と信じて人生を歩んでいくことが人にとってどれだけ支えになるか。
生きるということを、少年少女の視点から考えさせてくれる物語だった。また、思えば大人になる過程で人は、鎧を身ににつけるのだ。
そう考えれば、鎧を身にまとった大人からのアドバイスがいかに心もとなく、身勝手か。大人の立場からも考えさせられた。
5.0
ファンタジー風の設定と不登校の中学生が主人公なので、感情移入できるのかと、読み始めは心配でしたが、大人でも理解できる、ていねいな感情描写で上手く入っていけました。
自分が子供の頃を思うと、そこまで考えていたかと言うと、もっとモヤっとした感じなので、全体に大人びた感じがしました。
ただ、いじめの悲愴感や不登校の問題をテーマにした物でも無く、ファンタジーやミステリーとして限定される物でも無いように思います。
(この本は、小説なので、ネタバレになりそうであいまいな言い方ですが…)ラストの展開はあまり多くの本を読んでいるわけではないですが、久々に泣ける展開でした。
5.0
最初のころはイジメられ引きこもった主人公が一発逆転やり返すお話しかと思ったらそうでもなかった。SFチックだけどそこまでSFではないし、ストーリーも良かった。
最後にウルッとくるストーリーに胸が熱くなりました。本当に読んでよかったの一言です。なんとなくアニメ化、映画化しても面白いと思います。
5.0
教師になって子供の育ちを支援する方法もあるけれど、この一冊は教師何百人分、いやそれ以上の力をもっていると思いました。すごい仕事をされましたね…
娘のために買って、様子見にパラパラとめくったら、食事もとらず一気読みしてしまいました。
過去の、クラスの雰囲気に馴染めなかった自分、母親になった自分、最近思春期に突入した娘、クラスをまとめる立場の先生、悩む子供の力になりたいと願う先生……読み進めるうちに色んな立場に立っている自分を感じました。
読後、同じく読了した娘といろいろ話しました。絆が深まった気がします。信頼する気持ちが強くなりました。
女子特有の人間関係、生々しいです。ファンタジー要素はありますが、話の芯は、極めて現実的な話だと思います。主人公たちがやっていることも、どこまでも現実的。だからいろんな人の心に刺さる、読ませる話になったのでは。
たくさんの人に読んでほしいですね。特に思春期女子とその親に。
この本が苦しんでいる子の勇気を出すきっかけになり、闘うことをやめるきっかけになってくれたらと、願ってやみません。
5.0
実は途中から、こうなんじゃないかなぁ、、、、とは思っていました。そしてそれはほぼ正解だったんだけど、エピローグは想像を超えてて、
そうかーーーそれでかーーーあーーーーそうか!とストンと胸に落ち、じんわり涙がにじみました。ああ良かった。良かったね。
爽やかな風が吹くような読後感。辻村さんの本を一気読みしたくなりました。
殺戮にいたる病-(著者)我孫子武丸
【あらすじ】
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!
殺戮にいたる病のレビューを抜粋
5.0
ミステリや推理物は漫画、小説でよく見るのだけど、よく騙されてしまいます。この作品もしっかり作者の意図通りに騙されました。
これ以上はうまくネタバレせずにかける自信がないので書きません。おすすめはできると思います。
5.0
最初のページを読んだときからどんどんひきこまれていき、やめられなくなります。少し残酷な描写があり、顔をしかめてしまうところもありましたがとにかく読み始めたら止まりません!
そして・・・・・最後は愕然!!呆然!!もう一度読まずにはいられません!!!電車の中で読んでいたらわれを忘れて降りる駅を間違えてしまいました。
5.0
我孫子氏畢生の一大傑作だろう。同時分の流れの中からいっても抜きん出てる一個の達成である作品だと思う。眩暈がするような猟奇と時系列
の罠にはまっていけば、まずもって読者誰もが信じがたい画面に直面する事になる。まさに殺傷力99%を有す構成力。。
またミステリの概念以上に驚かされるのは、ここで描かれる家族の群像、母と息子の群像、そして社会が否応なしに対面することになる事態を
先見の明により完全に見据えてしまっていたことだ。原初の意味で本質的に母系社会・日本の凋落を感じられずにはいられない。
5.0
叙述トリックなる言葉も知らない頃、この作品に出会いラストですごい衝撃を受けました。一瞬どういう事なのか理解出来なかった程。
それまでが結構淡々と読めたので(グロい表現は人を選ぶでしょうが)尚更ショックが大きかったです。本当におもしろかった。
以来、叙述トリックものを読み漁ったのですがこれを超える作品にまだ出会えてません。友人・知人におススメしたいのだけど、躊躇してしまう作品でもありますね(笑)
5.0
「かまいたちの夜」で作者の名前を知って、試しに読んでみました。最後の1行ですべてをひっくり返されました。
犯人の日常やグロいシーンなど、すべてがラスト1行の伏線になっています。いろいろなどんでん返しの小説を読みましたが、これほど鮮やかなどんでん返しは他に知りません。
必ずもう一回始めから読みたくなる小説です。
5.0
絶対に読んでおくべき上質なミステリー。この手の物語は何を書いてもネタバレになるのでレビューも難しいです。
最初ハードカバーで読んだ時、帯に書いてある文章に驚いた事を思い出しました。犯人の名前が書いてあったからです。
我孫子武丸恐るべし。読み終えた時、作中で使われていた曲が頭の中でずっとリフレインしていました。
ミステリーのオールタイムベストに入れたい一作。
十角館の殺人-(著者)綾辻行人
【あらすじ】
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!
十角館の殺人のレビューを抜粋
5.0
今まで、その存在は知っていた綾辻行人という作家。私は2005年になって初めて読みました。「十角館~」は1987年のデビュー作です。
実は私は、綾辻作品および「館」シリーズを読むのは「十角館~」が二つ目だったのですが、どんでん返しのあの1行にビックリしました。その切れ味の良さ!
この作品から出会っていたならば、もっと鮮烈さを増していたかもしれません。だから、これから綾辻作品の「館」シリーズを読まれる方はこの作品から順番通りに読むことを勧めます。
お互いのことを海外の文豪の名前から付けたニックネームで呼び合うミステリ研の仲間たち。この名前こそがこの作品のキーになってる事柄でありまた、
海外の文豪をあまり知らない私には、その文豪達を知るキッカケにもなりました。
5.0
それまでも割と本は読んでいたのですが、探偵が出てきて賢しげにトリックを暴く、今で言う“コナン”的な、ミステリーというジャンルを正直軽蔑していました。
しかし、そんな私の軽蔑を180度転換させたのがこの作品です。あの一文を読んだときの、自分だけ時間の流れから取り残されたような衝撃は、10年近く経った今でも忘れられません。
それまで全く免疫が無かった事もあると思うのですが、あまりの衝撃に理解するのに相当時間がかかりました。
理解したときには夜中だったにもかかわらず“何これ?”“嘘やん”“やられたわ~”と叫んでいました。その後はすっかり中毒になってシリーズを買いあさり、
他の作家の作品も物色したりで今に至っています。少し大げさかもしれませんが、あの夏休みが無ければ今の自分は無かったとさえ思える作品です。是非一度読んでみて下さい。
5.0
謎自体は登場人物のある言葉によって、全て解ってしまうので、謎解きよりも騙されるつもりで読むとああやられたという快感が増します。
手口自体この手のミステリーの中でも秀逸だと思いますし、海外ミステリーのファンこそやられた感が増すと思います。
5.0
この本は私が綾辻行人さんを好きになった一番最初の本だが、なんというか小説初心者の私でもドキドキで読めた。次に何が起こるのか、起こってしまったのかを推理していく。
集団意識の中で自分以外誰も信じられなくなる心理状態にみんななっていきます。で、最後あたりがえ??ってなります。正直、なるほど!と思わせるような感じです。
名前の呼び方にも特徴があるので逆に誰が誰だかわからなくなるようなものではなくて、読みやすいです。
5.0
あまり典型的なミステリーは読むほうではないのだが、評判が高いので手を出してみた。孤島に行ったミステリー研究会の面々が、次々殺されるという何とも古典的かつ、陳腐なミステリー。
と思いきや、なるほど、人物設定や現場設定がすごいうまい。ミステリー研究会なら、ニックネームで呼び合うのは不思議ではない。
ここら辺が、後々絡んでくるだろうなぁと漠然と思いながらも、トリック自体は最後まで読めなかった。かなり緻密に作られたミステリーで、とても楽しめた。
ハサミ男-(著者)殊能将之
【あらすじ】
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!
ハサミ男のレビューを抜粋
5.0
久しぶりにミステリ作品を読みたくなりネットでも評判のこの作品を手にとりました。読みやすくて面白い!「ハサミ男」と呼ばれる少女殺害犯が3人目の標的、樽宮由紀子を殺害しようとした夜
偶然にもハサミ男の模倣をするように彼女は殺されていた。期せずして死体の第一発見者になってしまったハサミ男と刑事側の2つの視点で物語は展開されていきます。
主人公のハサミ男が真犯人を探る探偵役もこなすところが興味を惹きます。正直、ネタバレ場面で???になり最初は理解できませんでしたが読み返したら納得できました。
5.0
犯人は猟奇殺人鬼であり、殺人シーンも出てきますが、描写はそこまでグロくなく、とても読みやすいです。事件を捜査する刑事さん達もみんな感じが良いキャラでついほのぼのしてしまいます。
ラストはもちろんあっと驚きます。一風変わったミステリです。
5.0
殺人鬼の日常を描いた作品です。この殺人鬼は、何故殺人をするかなんて事を自問自答したりはしません。朝起きたら顔を洗うように、空気を吸うように、人を殺す事をごく当然のことだと思っています。
殺人鬼の視点から書いたパート、警察の視点から書いたパートが交互にでてくるんですが、私は、殺人鬼の視点から書いたパートが好きです。
殺人の下調べの為にどの駅を使った、仕事場で上司にこんな仕事を頼まれた、喫茶店で何を頼んだかまで、細かく描写しています。そのおかげで、
殺人や自殺といった非日常的なことをやってるのに妙な人間臭さ、現実感が漂ってます。そんな、非日常と日常の混ざり合った混沌とした空気がいい味出してます。
最後でひっくり返すミステリー的なトリックを使ってはいるんですが、そんな物おまけ・付けたし・飾りなんですよ。私は、トリックを知った上で二回目を読んでも充分楽しかった。これは、殺人鬼の日常を楽しむ作品です。
5.0
ジャンルとしてはミステリー小説。ただ、ミステリーは定義や「本格」「新本格」等のさらに細分化したジャンル分けなどなど、
面白さとは別の「こうあるべき」とのこだわりを持つ読者が沢山いて、そうしたこだわりに応えることも期待される(そうでなければ批判される)ことの多い分野です。
そうした「こだわり」の視点からすると当作はいわゆるツッコミどころがある小説ではあります。けれどもっと気楽にミステリーを、純粋にエンターテイメントとして楽しむのならとても面白い。
純粋に単純に面白いです。素直に読んで素直に「ああ!なるほど!」となりたい、私のような読者におすすめ。
13階段-(著者)高野和明
【あらすじ】
宮部みゆき氏絶賛!!!手強い商売仇を送り出してしまったものです。(本書解説より)犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。
処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
13階段のレビューを抜粋
5.0
読書ずきなのですが、なかなか時間がなく最初がまどろっこしい出だしだったり、長々しい文章が多いと途中飽きたりして、興味が失せしおりを挟んだままの本が多い中、
これは最初から引き込まれるものがあり、次はどうなるのたらろうかとか、犯人をこの人かもいやこの人だと、登場人皆が怪しいのも見処、
忙しい合間、次はどうなるのか犯人はいったい誰なのかを知りたく、2日間で読みきってしまう程の面白さでした。久々感慨深い小説に巡り会え感激です。この筆者の書いた本を全部読みたくなりました。
5.0
この作品ほど期待どおりに面白かった作品はありません。非常によかった、衝撃的な展開と秘められた真実。江戸川乱歩賞を受賞したことに疑う余地はありません。驚くことにデビュー作です。
これで。殺人トリックよりも、人間が殺人を起してしまう理由、動機が何なのか。冤罪はどのようにして起きてしまうのか。その中で死刑という法の下による殺人についても考えさせらてました。
予想外の展開と、応援したくなるような南郷と三上の心理描写がよくて入り込めました。殺人にしても強盗にしても、動機や理由の重さが、ぴったりと読者を納得させる場合にストーリーの幹がしっかりとしてよい作品になるんだと改めて感じました。
また数年後に読んでみたいと思う作品です。おすすめです。
5.0
迫り来る時間との戦いが非常にスリリングでした。
純一とその家族の悲惨な境遇を目の当たりにして、自分も若い時のようなバカはもうできないなと改めて思いました。
5.0
13階段、という題名をみて思いつくのがゴルゴダの丘でキリストの処刑につかわれた階段が13段だったこと。
ケンカのはずみで人を死なせてしまった青年、三上と、刑務所で彼を見守っていた刑務官、南郷は、老夫妻を斧で惨殺された事件で逮捕された男が実は冤罪であると信じて独自の調査を開始する。
唯一の決め手は、記憶を失った死刑囚の男が脳裏に焼きついた「階段」だった。
この作品は犯罪ミステリーであるとともに、わが国の死刑制度について疑問を投げかけるというテーマを持っている。一体、なぜ死刑は必要なのか?報復のため、それとも犯罪の予防のため?
死刑執行に自ら手を染めた南郷のエピソードは残酷で、ボタンを押すだけだと思っていたら、実際に縄を首にかけて、死んだあとの確認もさせられるというのは、
たとえ法によって認められたとはいうものの、「殺人」には変わりなく、一生つきまとう恐ろしい思い出になるというのがわかる。
ミステリーの部分だが、中盤にかけてなんとなく展開がわかる。でもそこから読者が予測していなかったようなしかけがされている。
あとがきで宮部みゆき氏が、乱歩賞の入選者選びがこのときほど簡単なときはなかったと言うほどに全員納得の作品なのでミステリー好きには必読の一冊です。
青の炎-(著者)貴志祐介
【あらすじ】
櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。
警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。
その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。
青の炎のレビューを抜粋
5.0
倒叙推理小説は好きですが、長編でここまでのめり込んで一気読みした作品は、初めてです。家族を守るため、完全犯罪を計画した秀一少年。法医学書まで買い込んで計画を練る辺り、
貴志祐介氏らしい組み立てにワクワクしました。第1の殺人を完遂して、ハッピーになれるはずなのに、躁鬱的になるところは、「人を殺しても何も解決しないよ」という、
貴志氏の思いが込められているのでしょうか?第2の殺人はより簡単に、より自己愛的に遂行を決意します。やはり、殺人罪がかからない方法を吟味し、罪を逃れようとしますが、
ここでは第1の殺人後のそれとは、微妙に動機が違っているように思います。全般を通して、「愛する人々のために、罪を被る訳にはいかない」という動機付けがされています。
秀一少年の苦しみ、孤独、懊悩が、乾いた文体ながら、繊細に描かれています。普通の倒叙推理小説のように、警察(あるいは探偵)との間の、スリルに満ちた掛け合いはありませんが、
青春小説的な色合いの強い作品なので、あえてそういった部分を排除したのではないでしょうか?とにかく面白かったです。
5.0
ネタバレになるのであまり書きませんが先ずは完全犯罪がありきで始まる物語動機にも全く不純はなく読者も共感出来ると思うその完全犯罪が少しづつ崩れていく様が丁寧に書かれている
一つ一つ綻びが出てくる所あたりに読ませる側を冷や冷やさせる刑事、犯罪ものとしては異色の秀作だと思います!
5.0
珍しく犯人を応援してしまうミステリー作品。主人公が犯人という設定だからか、見つかんな!と思いながらずっと応援して読んでいた。そんな風に感情移入できる悲しいミステリー
5.0
途中まですらすら読めて、でも内容的にうまくいかないという落ちなんだろうなと思いながらも読み続け、やはり最後は、なんだかぽかんと胸に穴があいたような虚無感でした。読みやすかったし面白かったです。
屍人荘の殺人-(著者)今村昌弘
【あらすじ】
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。
部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!
屍人荘の殺人のレビューを抜粋
5.0
なんだこれ、めちゃくちゃ面白かった。豪奢なペンションに集まった主人公たち。他の参加者はあきからに過去に何かあった様子。いかにもな舞台といかにもな登場人物のもとお約束の密室殺人が起こって。
っていう前に突然押し寄せてくる〇〇〇。まじかよ。ミステリと同時進行でパニックホラーやってるわけでこの時点で相当楽しい。事件が起こるまでが退屈だったり、中盤で中だるみしたりみたいなことが一切ない。
伏線はるのも推理するのも全部命がけなんだから。そして単なる色物ではなく、ミステリ部分の出来が良いのが素晴らしい。理不尽にならない程度に考えさせられるトリックで、悩みながら楽しく読めた。
最終盤に諸々の要素が一点に収束していくのが美しい。それでいて完全にフェア。キャラクターに魅力があったのも良かった。無機質な関係でなく、なんだかんだ人間ドラマしてたのはとても好み。
個人的には傑作だった。エンターテイメントと本格ミステリのバランスが魅力的な作品。
5.0
実際に買って読んでみました。そして読後には、やはり自分で読んでから評価をすべきだなと思いました。結論から申しますと、今作は五ツ星評価です。脱帽しました。
今までありそうでなかった発想。誰もが面白そうだが、手を出さなかった発想です。あらすじを聞いたときは、ひょっとしてバカミスなんじゃないか思いましたが、
著者は間違いなく本格ミステリ愛好家でしょう。トリックにも頷かされました。そして文体やキャラクターがライトノベル的で軽いだとか、バカにする声もありますが、
第一にライトノベルを他の小説よりも下に見ることに感心しません。近年ではライトノベルとミステリの融合であるライトミステリが人気です。新しくて若いからダメと言うのではなく、
新しいものを理解し、古いものとどう折衷させるかを考えるべきではないでしょうか。どんな業界も、古いままでは滅びるだけです。そういう意味でミステリ界の常識を打ち破った今作の意義は大きいでしょう。
ちなみに今作に対して、心に何も訴えかけてくるものがなかったとか言う人はナンセンスです。エンタメと純文学のことをよくわかってから、意見してほしいものです。
5.0
読む前は、「いくらなんでも大量の○○○に囲まれてのクローズドサークルってどうよ?」と思っていた。しかし、その設定がしっかりトリックに利用されていて、さらに物語に独特の緊張感を生み出している。
また、探偵役の剣崎や主人公の葉村のキャラクターも面白い。唯一ケチを付けるなら、殺人に至る動機に関する部分がちょっと…。
しかし、これは良い作家さんだと思っていたら、最後に「現在フリーター」と紹介されていて吹いた。
5.0
最近、小説を読み始めた私ですらとても面白いと感じた。通常ではまずありえない状況にあることから想像の幅が広がり、独自に推理していくことがとても楽しかった。
中でも、解決編の消去法による推理はとても鮮やかで読んでいて心が躍った。
しかしながら、「本格ミステリーはこうあるべきである」という考えを強く持っている人には、この事件を取り巻く環境と相容れないものがあるのかもしれないとは感じた。作者の次回作にも是非期待をしたい。
アヒルと鴨のコインロッカー-(著者)伊坂幸太郎
【あらすじ】
ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!?
そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ! 清冽な余韻を残す傑作ミステリ。第25回吉川英治文学新人賞受賞。
アヒルと鴨のコインロッカーのレビューを抜粋
5.0
過去と、現在が交互に語られていくのですが、過去の事件「動物虐待」がとてもつらくて。。。しかも、関係者がみんな死んでいく。となると、すごく悲劇のようなのだけど、なんか乾いているのです。
で、読後感がすっきりしているのです。琴美が、どうして、さっさと警察に駆け込まないのか、とてもいらいらして、だからそうなっちゃうんだろって、つっこみたくて、苦しかったよ(笑
ブータンでは、蚊も蝿も殺さない。死んだ、おじいさん、おばあさんの生まれ変わりかも知れないから・・・そうかあ、生まれ変わりを肯定するという基礎があるから、
死がそんなにもつらくない世界が描けたのかも知れないです。
5.0
作品はいきなり、河崎と椎名が書店を襲う場面から始まる。わざわざ書店を襲って、盗むのは「広辞苑」一冊だけ。
この「なぜ?」から作品にグイッと引き込まれる。作品は「2年前」と「現在」の話が交互に進み、さまざまな謎が最終局面で明らかとなる。
これまでの4作品同様、作者のセンスある文章を堪能しながら、本作品を楽しんで頂きたい。作者自身、「ミステリーでは伏線の張り方が難しい」とインタビューで答えているが、
確かに本作品でも、その点に若干の甘さがみられる。この作品の場合、特に先にネタが分かってしまうと作品のおもしろさが半減するため、レビュー・書評等を読むことなく、本作品を読み始めることをおすすめする。
5.0
「本屋に強盗に入るって、いったいどうして?」それが、この本を読み出して最初に抱いた疑問でした。二人の主人公が交互に語っていくうちに、疑問も解消されるのかと思ったら……。
なんと、謎は深まるばかり。タイトルも謎。どうしてコインロッカー?分からないことばかりだけど、魅力的なキャラクターたちのおかげで、決してあきない。むしろ、どんどん引き込まれる。
そして、頭の中が疑問符でいっぱいになった頃、まさか、最後にあんなふうにつながっていくとは…。本当に、驚かされました。
5.0
現在と過去(2年前)が交互に描写されているのが大きな特徴。なぜ現在と過去の登場人物に違いがあるのか、ストーリーが進むにつれて次第に分かってくる。特にその瞬間は想像を裏切る結末だ。
動物虐殺という残虐なシーンもあるが、なぜか全体的に渇いていて、読んだ後はスッキリする。それだけ満足のいく小説ということだろう。
いつも恋愛小説を読んでいる人も、たまにはこういったスパイスを効かせるのもいいかもしれない。伊坂小説を読むのは初めてだが、この小説を読んで一発で伊坂ファンになった。
そう思わせられるに十分な小説だと思う。今後にも期待したい。この渇いた感じが吉田修一に少し似ているのもあり、吉田ファンにもオススメできる小説家である。
スマホを落としただけなのに-(著者)志駕晃
【あらすじ】
麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され…。
スマホを落としただけなのにのレビューを抜粋
5.0
スマホって絶対に、持ち歩いていますよね。ラインやFacebookだっていまや、日常のもの。とても便利になったけれど、実際、そこまでスマホに詳しいわけでもなく、お気軽にラインやFacebookをしていますが、
もし、だれかが自分になりすましていたら?あまりにも日常にあるものだけに、落としたら、いえ、拾った人が、とんでもない人物だったら?手に収まる小さなスマホの中身は、自分の私生活のすべてを知っているということも過言じゃありません。
財布を落としていたら、それはそれで、カードや免許証などの手続きで大変。でも、本当に失くしたら困るものって、実は、いろんなデーターの入っているスマホかも。
そして、最後に犯人が分かりますが、それよりも真実は・・・。最後まで読まなければわかりません。一読の価値ありです。
5.0
すっごく面白かったけど怖かった。この本を読んfacebookもインスタグラムも退会しました。現代における犯罪が気軽に利用できるSNSから始まり、ありえなくない話だけにリアルすぎていまだに引きずってます。
『ただ、タクシーにスマホを忘れただけなのに』たったそれだけのことがあんな事になるなんて!この本を読んで身近に潜む恐怖を知ることができて良かったです。
しかし、話の展開も良くて本当読みやすかった??漫画もあるみたいなのでそっちも読んでみたくなりました♪
5.0
とても緊迫した感じと臨場感が私には感じられた。サスペンス!私はスマホを持つ気がなくなった。しかしミステリーとしては最高に面白かった。私は犯人が分かっていても楽しめるタイプですけれど。
実写化にしやすいストーリーではある。それを想像しただけで吐き気がする。小説は小説で楽しんでほしい。文字からの方が、緊迫感は伝わる。ミステリーは実写にしないでほしいほどだわ。
5.0
巧いと想ったのは主人公を平均的人物像に設定した点。SNSなどに関する知識や認識、また情報に対する危機管理意識の薄さはほとんどの一般人に該当する。
自意識過剰に想えなくない行動パターンも実は極めて平均的。だからこそ、どこにでも居そうで自分たりえる。心情的な共感は覚えずとも容易に自分自身と置き換えが可能な主人公、ゆえにこの小説は怖い。
ネット社会が抱える根本的な問題に踏み込んでいる点も物語に深みを与える要因のひとつ。「被害者に該当する捜索依頼が出ていない」スマホ全盛の時代が内包する危険を映したこのエピソードは実際にもありうる。
原題のままならこの小説を手にしてはいなかったはず、この題名にした点も大きい。幾重にも恐怖を散りばめながら一気に読ませる力量には感服した、次回作も期待したい。
噂-(著者)荻原浩
【あらすじ】
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
噂のレビューを抜粋
5.0
うたい文句の最後の一行がそれほどでもないとのレビューが多かったので、過度な期待をせずに読みましたが…自分は最後の一文で驚愕しました!
内容にふれるとネタバレしてしまいそうなのであえて伏せますが、描写も素晴らしく、トリックもこれみよがしではなくさりげなく使ってくるので読了後の、やられた感はハンパなかったです。
ただ、後味はいいわけありません(笑)殺戮にいたる病と雰囲気がにてました。
4.0
最近、どんでん返しミステリーにハマっていて帯の「ラストの1行…」という箇所に引かれた。書評を見ると、評価もまぁまあの割に賛否両論。さて、自分はどっちか…。
結果的に、個人的には「否」でした。何とも言えない、後味の悪さが残ってしまいます。けれども、公平に物語として見れば十分に面白く、読んでる最中に噴出しそうになる可笑しみはこの作者独特のものなのでしょう。
父娘の会話が凄く楽しく、微笑ましく。男やもめの刑事の家庭が見えて、サイコミステリーを読んでいるというのを忘れさせてくれるような感じ。コンビを組んだ名島刑事との、最初の戸惑いが
次第に”チーム”意識が高まって、お互いに認め合うようになる
下りも、わかり易くて読んでいて楽しかった。ストーリー的には、サイコ野郎が誰なのかなど全く予想がつかない展開では無かったけれど、やはりこの本は最後に1行に瞠目すべきことがキーなのだとしたらそういう意味では成功だと思います。
読んでいても、主人公である小暮刑事の姿が目に浮かぶようで、応援しながら読んでました。登場人物に、感情移入して読むことが出来るのはやはり魅力があるからだと思います。こんな風に書ける作者の他の本も、是非読んでみたい。
4.0
噂、つまり、風評をテーマにしたミステリー。展開が大変面白く、まる一日ぶっ通しで読み上げた。作品のポイントは二つあり、噂というものの質と、犯人の推理だ。
この二つの比重が五分五分という印象で、読者側としても、得をした感覚だ。真犯人の推理に関しては、かなり迷走させられ、加えて、ラストで、もう一展開ある。
それにしても、風評とは、こんなものだとも思うが、これを専門に扱う会社があるというのが傑作。風評を、マーケティングの武器にするのは、有効な手段であるが、倫理的には感心しないという、印象を持つ。
著者はミステリー作家ではないが、こんな人間味あふれるミステリーは、味がある。休日一日全部を費やして、読み切って、微塵の後悔も無い。
4.0
作品自体は続きが気になってどんどん読めてしまいました。犯人はわりと分かりやすいかもしれませんが、この小説の怖さはそこじゃないのです。帯に書いてしまってあるのはどうなの?というご意見ももちろんあると思いますし、最もなのですが。
本当に、最後の方で、あれ…とだんだんイヤな感じがして、ラスト1行で愕然です。知っていても、こんなラスト1行なんて想像も出来ないので…驚きと、なんだか悲しい気持ちでいっぱいになりました。
やめて、それだけは…!という気持ちになる、そんな衝撃でした。
まとめ
まだまだありますが、今回はこれまで。以上、おすすめミステリー小説をご紹介でした。